小さな手紙

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それがいつしか、苦痛に感じた。 遅くまで待たれているのも、彼女も疲れているのに無理をして待っていることも。 だから、夕飯は用意しなくていい、と俺から言った。その時の彼女のひどく傷付いた顔は、今でも忘れない。 その場に貼り付けられたような重い身体を奮い立たせてリビングに行くと、外気温よりほんの少し暖かい空気が、冷えた体を包みこんだ。 寝室では、彼女が眠っている。 コンビニの袋を床に落とし、弁当をテーブルに投げる様に置いて、なんの魅力も感じない「カルビ弁当」と書かれたラベルをぼんやり見つめた。 最近は何を食べたいという欲求も、何を食べても旨いと感じることもない。ただコンビニに入ってすぐ見える物を掴んでいるだけだ。明日の朝、体を起こすためのエネルギーを補えればいい。 飯なんて、ガソリンと一緒だ。
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