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『ヘブンズドア』という飲食店がある。
細い小道にひっそりと佇むその店はとても美味しいと評判だ。
いや、とてもなどという言葉では足りない。その店の料理はまさに極上の味と称される。そこに比喩も何もない本当に極上なのだ。
口の肥えたビップや料理人、大企業の社長や令嬢などを唸らせるほどの料理を提供している。
だが。
その店にはある奇妙な噂が流れていた。
『ヘブンズドア』で食事をした者は数年後に死ぬというものだ。
しかも鬼籍に入った者たちに共通するのは、どれも自殺したという点だった。
別段、日常に不満を持っていたわけでもない人たち、むしろ人生を謳歌していたような者たちが自殺で死んだ。
周囲に話を聞けば予兆はあった。
あの店の料理が食べたい。どこにあの店はあるのか。もしかするとこの世の料理じゃないのかもしれない。この世にないのなら何処に。
そして、弾かれたように彼らは動き出す。
ある者はビルの最上階から飛び降り、ある者は首を吊る。またある者は薬で安楽死を選び、ある者は銃を当てた。
まるで誘われるようにそれぞれが天国の扉を開けた。
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