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知世は山の中を走っていた。
正しくには追ってくるモノから必死で逃げていた。
大人達は今日は絶対に山には入ってはいけないと言われていたのに。
その言いつけを守らなかったから、こんな恐ろしい目に合っているんだ。
なんであの時山に入ったりしたんだろう。
アレはまだ追ってくる。
見た目は黒いもやのようだった。
背丈が人の倍もある。
もやの中に幾つも目をギョロつかせていて、
何本もの枯れたような不自然に細い腕をこちらに伸ばして追いかけてくる。
もやの真ん中に大きく湾曲した口が付いており、
何かぶつぶつと呟いている。
それは、呪詛のようだった。
知世は半泣き状態でそれでも形振り構わず走り続けた。
捕まってしまったら一体どうなってしまうか。
もう村がどっちの方角にあるのかさえ分からなくなっていた。
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