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この頃、両手に収まるくらいの半径30センチメートルほどで僕の世界は成り立っていた。その枠に入ることが許されていたのは僕の母と弟の二人のみだった。それ以外の人たちなど、どうでもいいと思っていた。僕の世界には全く必要がなかったのだ。
――その、はずだったのに。
彼女はいとも簡単に僕のその枠を飛び越えて、僕の懐に入って来た。そして、内側からその枠を、僕の世界を、1メートル、10メートル、1キロとだんだん広げてくれた。
今の僕の世界が色づいているのは、彼女のおかげだ。今や彼女がいなかったら、僕の世界は成り立たない。
このお話は、そんな僕と天真爛漫な彼女との思い出を忘れないために綴る備忘録である。
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