終章  

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「どうしても、というのであれば、俺が教えてやってもいい」 「一緒に……シダーが?」 「むしろ造り出す手伝いと言った方が適切か。やり方は知らんがな」 「………………嬉しい」 本で顔を隠しながら、チェルシーは呟いた。 「ああ、俺も楽しみだ。新たな魔法がどのようなものか、気になるからな」 「うん……でも、それだけじゃなくて」 「?」 「…………ううん、なんでもない」 チェルシーは、染まった頬を本で隠しながら答えた。 「ゆっくりでいいよ。少しずつ教えてね」 「?…………そうか?」 チェルシーの様子を不思議そうに見下ろしながら、シダーはリンゴを齧った。 ふわり。 日溜まりの中、涼しげな風が吹き、シダーはふと、顔をあげた。 「!」 小さくて、ましろな花びらだ。 「…………これは」 シダーは、リンゴの大樹を見上げた。   咲き乱れるリンゴの花びらが風に煽られ、甘い香りと共に、空へと高く、高く、舞いあがっていた。                        【おしまい】
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