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「おはぉ……ござぃ……す……」
傍らのベッドに半身を起こし、グラスにオレンジジュースを注いでいたサスが、相変わらずモゴモゴとした口振りでエクート様に挨拶をする。
怪我人専用の仕様になっているそのベッドの上には、サスが食事をしやすいように、木製の小さなテーブルが備え付けてあった。
テーブルの上には、焼いていない白パンと、歪な形に切られたトマトやレタス、トナカイ肉の燻製を炙ったもの、それからシダー特製調合の薬草ドリンクが並んでいる。
私が作ったにしては、なかなか上出来な朝食だ。
聞き取れないサスの挨拶に手を振って応じたエクート様が、跳ねるようにして私の足元までやって来た。
ハンカチを濡らして固く絞ると、私は黒く染まったエクート様の鼻の頭の汚れを拭う。
「こんなに汚してしまって。朝の礼拝が済んでから謝りに行きましょう。今日はフォルク様ですか?それとも……」
「ミモザッ!」
私の話を遮る形で、エクート様が私のローブの端を掴んだ。
潤んだ幼い瞳で、まっすぐに私を見上げる。
「お風呂、入ろう!!」
「………………え?」
何を言われたのか理解できず、私はエクート様と、背後にいるサスの顔を交互に見比べた。
パンを食べようとしていたサスは、口を開けたまま動きを止めていた。
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