第15章【イブ】

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「あの……」 「転んで服が汚れちゃったんだ!……ね、だからいいでしょ!?そんでちょっと話聞いて!」 服が汚れたから私と一緒にお風呂に入る。 考えれば考えるほど、奇妙なこじつけだ。 エクート様はこう見えて王妃様。 いくら仲が良いからと言っても、同じ浴槽を使っていいものだろうか。 けれど、エクート様は既に決定事項だと言わんばかりにぐいぐいと私の袖を引く。 お風呂……というのはつまり、イストルランド城の2階、中庭にある露天湯の事だろう。 一応の目隠しとパーテーションは施されているが、あの露天湯はもっぱらイストルランド兵専用と化している。実質、混浴も同然だった。 【王妃入浴中】 とでも張り紙をすれば大抵の人間は入ってこないだろうが、それでも万が一というものがある。 むしろ仲良しの兵士の場合、エクート様相手だから叱られないだろうと、堂々と入ってくる可能性の方が高い。 「ですが、私が使うなんておこがましくて」 「いいからっ!ね、ねっ!?」 やんわりと拒否するもエクート様は必死だ。 こう言う時に断りきれないのが私の性分というもの。 誰か……見張りをしてくれるなら、少なくとも覗かれる心配はない。それなら…… 「…………サス、」 一番信頼できる人。 入り口にサスが立っていてくれれば、少しは安心できる。 「……ふぁ、へっ!!?あっおふ、オフろッ!」 振り返った途端、酷く赤面しているサスと目があった。 「みっ見にゃいから!!」 噛みすぎて、サスはおかしなことを口走っていた。 覗きをするのではと疑われていると勘違いしているらしい。 頭の後ろをかりかり掻き、サスは慌てて首を振る。 「ち、違う!見ないから、多分!」 堂々と“多分!”と言える辺り、サスらしいと言えばサスらしい。
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