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「また、なにもできなくなっちゃった」
視線を足元に移し、チェルシーは呟いた。
顔をあげてしまえば、ひどい顔をシダーに見られてしまう。
「回復魔法も使えないし……私、これじゃあただの役立たずだよね……」
「…………」
………………ぽす。
「っ!?」
チェルシーの頭に、突然何かが当たった。
驚いて顔をあげると、目の前に赤い背表紙。
「忘れ物だ」
「これ……」
シダーから手渡された分厚い本のページを開くと、そこには、何も書かれていなかった。
表紙に見覚えがある気がして、改めて見ると、そこには“デラシネ”と書かれている。
「中身は全て消えたが、丁度良い。詠唱を書き留めるノートにはなるだろう?」
チェルシーは、受け取った冊子を胸に抱えた。
その本はずしりと重い。
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