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「ほらほら、行こう!」
サスにはもう目もくれず、エクート様は私の背中を押し始めた。
「サス……それじゃ、行ってくるね?」
ジョッキ並みの量がある薬草ドリンクを煽り続けているサスを一瞥してから、私も部屋を後にした。
祭壇の前を通り、礼拝堂の入り口にあるフェリ様の像の横を過ぎた辺りで、私の部屋の方から「おれも……!」と声がしたような気がしたけれど、敢えて私は聞かなかった事にした。
…………そして、今。
白大理石と岩とで作られた巨大な浴槽に身体を沈め、私とエクート様は向き合ってお風呂に入っていた。
浴槽の真ん中には、レイヴン商会の方が運んできたという巨大なドラゴンの骨が鎮座している。
これが私の故郷、パーカディアの地下で飼育されていたあのドラゴンの骨だとパパに聞いた時は、改めて背筋が凍る思いがした。
こんな巨大なドラゴンを使って街を滅ぼそうとしていたなんて、モーヴ様はやっぱり恐ろしい計画をたてていたんだと思い知らされる。
イヤな思い出を消そうとして、私は湯の中で思いきりため息を吐き出し、それから伸びをした。
焼けていない肌は、まるで血の通っていない人形のように白くて不気味だ。
最近忙しかったせいか、学生の頃と比べて痩せたような気もする。
サスはどんなタイプが好みなんだろう。
サス自身細いから、私の方が太かったらがっかりさせてしまうだろうか。
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