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青空に映える巨大な白い牙を見上げていると、視界の端に映るエクート様の視線が私の方に向けられていることに気がついた。
「…………おおきいね」
エクート様が呟く。
「そうですね、レイヴンの方も、運ぶのにさぞ苦労なさったでしょう」
「…………そうじゃなくてさぁ」
ちら、
ちら、
……と、エクート様の視線は私の胸元に向けられていた。
いつの間にか、湯に浮いた胸を見られていたらしい。
視界の効かない夜でさえ裸を見られると動揺してしまうのに、こうして白昼のもとに晒された胸を見られるなんて、相手がエクート様であってもやっぱり恥ずかしい。
「ッ!」
慌てて胸元を隠すと、湯気のたつ水飛沫が跳ね上がる。
「こ、こんなの脂肪ですし、浮いて大きく見えてるだけですから!」
「……浮いてみたいよ」
拗ねたように口をすぼめると、エクート様は自分の胸を揉み始めた。
エクート様の胸元は、やっぱり成長前の子供のそれ。
かといって子供だから仕方ない、と言えばまた別の悪口に聞こえてしまいそうで、私は口をつぐむ。
「いいなぁ、羨ましいなぁ……あとちょっとだけでも胸があれば、ボクも女として見てもらえるのかなぁ」
わざと少年の振りをしているのだと思っていた私にとってエクート様のその台詞は意外だった。
……それとも、今回だけ?
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