一輪の真紅の薔薇

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 この人はこの人で……  好きでもない男と結婚しなきゃいけないわけだ。  ふ~と、大きく息を吐きだした。 「……それなら。」  俺がこんなことを言うべきじゃないのかもしれない。  そもそも  俺を待っている人がいるのに。 「今日は俺が聖時の代わりをしましょう。」  ……だけど。  この拒否権のない結婚を一人受け入れようとしているこのご令嬢がとても不憫に見えて。  これだけの美人なら、好かれてもいない男なんかと結婚しなくても引く手あまただろうに。  俺の言葉にご令嬢は顔を上げた。 「……え……?」  知佳のことは気にはなるが……。  今日だけこのご令嬢のお相手になるか。  わざわざ一人でこんなところまで来てくれたんだ。  星野のためにも、聖時が嫌われるわけにはいかない。 「まあ、そうね。  きらくんに帰りは送ってもらったらいいわ。」 「え?あの……」  おふくろの言葉に戸惑った声音のご令嬢。  ……と言うか。  どうゆう意味? 「……帰り?  行きはどうやって来られたのですか?」 「あ、あの……。執事の伊部に。  帰りも伊部に頼みまわす。  そのつもりでしたし。  煌人さんお疲れなのに申し訳ないですもの。」  ご令嬢の言葉に驚きが多くて。  ……この人、お嬢様のくせに意外と気を遣う。  お嬢様ってもっとこう……我儘っていうか、自由奔放っていうか……。  そうゆうもんじゃないのか?  ただの妄想だけど。 「申し訳ないのはこちらの方だ。  本当なら聖時がきちんとするべきことですから。  お帰りはきっちり送り届けさせていただきますよ。」  知事に星野家はダメだな。なんて烙印でも押されたら一巻の終わりだ。
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