一輪の真紅の薔薇

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「え!……ええ……」  ご令嬢は俺の言葉にソファから立ち上がった。 「ここはリビングになりますから。  玄関の奥に応接間があるんです。」  それを確認してリビングを後にする。  ご令嬢に家の中を案内する。  応接間、親父とおふくろの部屋、親父の書斎、節子さんの部屋。  それにトイレ、洗面所と風呂。  ご令嬢は俺の説明を真剣に聞いていた。  時折、節子さんが飾っている置物なんかに視線を向ける。  そして、小さく微笑むんだ。  その横顔を……  綺麗だな。  って……思ってしまう。 「1階はこんなもんです。  それじゃあ、2階に行きましょうか。  悠子さんのご自宅に比べれば小さい家だと思いますけど。  住めばそれほど悪くないですよ。」  ご令嬢の自宅はさぞ立派だろう。 「ええ、楽しみですわ。」  その言葉と一緒に綺麗な笑顔をくれた。  聖時の妻になって、この家に嫁ぐ覚悟を決めているこのご令嬢は……  なんて言うか……    凛としていて  高貴で……  強くて、美しい。  薔薇……みたいだ。  一輪の……  真紅の薔薇。
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