一輪の真紅の薔薇

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 ご令嬢を2階へ案内して、5部屋の部屋の説明をする。  俺の部屋と凛子の部屋を見せる必要はないだろう。  だから、聖時の部屋の扉を開けた。 「どうぞ、ここが聖時の部屋です。」  そう言って中に入るように促した。 「……よろしいの?」  ご令嬢は俺の顔を見上げた。 「ええ、もちろん。」  8畳の部屋。  俺たち兄弟の部屋はどこも8畳の部屋。  作りはそれぞれ左右違ったりあるけど。  聖時の部屋は聖時の部屋であって、空き部屋と一緒。  ベッドと大型の本棚。  聖時は兄弟の誰よりも本が好きだった。  だから、大型の本棚ですらあふれるほどの書物。  小説や医学書や医学雑誌。  本当に色々な書物であふれている。  あと、ソファとテーブルと机。  ご令嬢は聖時の部屋をぐるりと一周見渡した。  急にリビングから連れ出したことをお詫びしておいたほうがいいかもしれない。 「……さっきは」  そう思ってさっきの話を掘り返した。  ご令嬢はゆっくりと俺に視線を向けた。 「突然母があんなことを言い出して申し訳ありませんでした。」 「……え?」  ご令嬢は本当に何のことだかわかっていないようだった。  ……わざわざ掘り起こさなくてもよかったかもしれない。 「俺の結婚がどうのって話です。」 「ああ。……いえ……」  ご令嬢の表情がくるくる変わる。  このお嬢様……  本当にお嬢様らしくないというか……  綺麗で……  可愛らしい。  ご令嬢のくるくる変わる表情に自然と笑いが零れる。  
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