あてがわれた婚約者

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 ******  顔合わせ当日。  今日、初めてお相手の方に会いますの。  写真でお顔は拝見しているから  もちろん、それはお相手も同じことで。  もう、結婚に向かって一直線。  わたくし付きの美弥子が着付けをしてくれて、綺麗に顔も髪も結い上げて出陣する。  気持ちはいらなくても、嫌われるのはやっぱり嫌だと思ってしまう。  これから死ぬまで一緒なんですから。  伊部の運転する車に揺られながら、お父様と向かった先は政界人や富豪が利用する料亭。  わたくしとお父様が到着するとすでにお相手の方は席についていた。  ふすまが開くと座っていた殿方二人が立ち上がった。 「ああ、星野さん。  遅くなってすまなかったね。」 「いえ、我々も今しがた着いたところです。」  お父様に答えたのはお相手の父上。  見るからにダンディで素敵な方。    そして…… 「息子の聖時です。」  見上げるほどの背の高さに……  星野外科病院の玄関先でわたくしを抱きとめてくれた彼の姿を思い出してしまった。  伊部が勘違いしていて、あの時の方だったら……  そんな儚い願いに胸がときめいて。 「星野聖時です」  低くて滑らかで……  落ち着いた声音。  とてもいい声だけど…… 「ああ、娘の悠子だよ。」  違った。  ……違ったんですわ。  わたくしが知っている彼の声とは別人。 「轟悠子ですわ。」  小さく笑って答えた。  零れそうな溜息を押し殺した。
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