一輪の真紅の薔薇

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   さすがに、ホットミルクティだけじゃ寒さをしのげるのもその場だけだ。  根本を解決しておかなければ。  さっきぐるりと回りながら数件の店でそうゆう類のものを目にした。  観察力だけは自信がある。  走ってその店に向かい出店者に直接声をかける。 「ストールがあるだろ。全部見せてくれ。」  俺の勢いに驚いて「あ、ああ……はい。」どもりながら答えた。  この店の商品にご令嬢は一番興味を示していた。  だから、少なくともここのものなら気に入ってくれるはずだ。  ご令嬢の好みなんてさっき会ったばかりで知るわけもない。  だから……  感だ。  少なくても今日一日は使ってくれるだろうと思う、直感。  タイムリミットはご令嬢がロイヤルミルクティを飲み終わるまで。  出店者が出してきたのは3種類のストールだった。  チェック柄のレッドミックス  ダイヤダマスク柄のグリーン  単色のキャラメルベージュ  それぞれ手に取って感触も確かめる。 「さっきの……彼女さんに……ですか?」  出店者は俺とご令嬢のことを覚えていたみたいでそう声を掛けてきた。  ……彼女……。  ご令嬢と俺の関係は……  義理の兄と弟の婚約者。  それ以上に近づくこともない。  だけど……  その出店者の勘違いが心地よくて俺はあえてそれを否定しなかった。 「そうだ。」  俺の答えに出店者は満面の笑みを浮かべて「それなら……」その中からひとつを選んだ。 「絶対にこれです。  手触り的にはこのグリーンが一番ですけど、彼女さんにグリーンは似合わないと思います。  上品なこのキャラメルベージュがいいと思いますよ。」    単色のキャラメルベージュ 「……そうか。  じゃあ、それを貰う。」
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