内に秘めた焦がれる恋心

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【……どいう…こと……?】  知佳のことは好きだ。  この気持ちに今も変わりはない。  なのに……  俺はきっと知佳を幸せには出来ない。  この想いが頭の中で何度も駆け巡っていく。 「仕事から帰ったら、弟の婚約者が一人で来ていて。  その人とずっと一緒だった。」 【……え?】  消えそうなほど小さな声音だった。 【ずっと?  どういうこと?  ……煌人……意味がわかんないよ。  弟さんは……?】 「知佳。」  動揺する知佳の声音に俺は少し強めの声で名前を呼んだ。 「大事な話がある。  今から知佳のところに行くよ。」 【や、やだ……。  大事な話って……?  今……ここで話してよ……】 「ふぅ」  溜息が漏れた。 「電話で出来ない話じゃない。  だけど……できれば、知佳の顔を見て話したい。」 【……別れ……話……ってこと?】  別れ話になるかどうかは……  知佳しだい。  こんなこと電話で言えるわけがない。 「今から行くよ。」  知佳の問いに答えずに俺は電話を切った。  知佳の元へ車を走らせながら、知佳のことを考える。  俺と結婚したがっている知佳。  知佳は今まで付き合ってきた女性の誰よりも俺のことを理解していて、俺のことを考えてくれる。  俺の身勝手をすべて受け入れてくれたのは知佳だけだ。  ……だから、今まで続いてきた。  
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