内に秘めた焦がれる恋心

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「……知佳……」  俺のその言葉に知佳はビクッと肩を震わせた。  俺をこんなにも好きだと言ってくれる知佳。 「俺は知佳が好きだ。  この気持ちは変わらない。  だけど……俺と一緒に居ても知佳は幸せにはなれない。  結婚願望がある男と一緒に居る方が知佳は幸せになれるんじゃないのか?」  知佳はゆっくりと顔を上げる。  その瞳は充血していて、かわいそうになるくらい涙でぐちゃぐちゃで。 「煌人と結婚したいなんてもう言わない。  結婚したいなんて言わないから……煌人とずっと一緒にいちゃダメなの?」 「2年。」  こんなこと言わなくてもきっといい。  ただただ、知佳を傷つけて追い詰めるようなこと。 「聖時が結婚する2年後。  俺は……自分の心を封印する。」 「……どうゆうこと……?」 「聖時が婚約者を好きにならずに結婚したら、俺はそれと共に好きな人との別れを選ぶ。  それが聖時に対しての懺悔だと思ってる。」  知佳の瞳からまた涙が溢れてきて。  無責任にも俺の手が……伸びる。 「2年後に知佳が俺の傍にいてくれたとしても、俺はその時点で知佳とはもう会わない。」  知佳の頬にそっと触れる。  ……知佳は……  俺の手を拒まなかった。  好きな人にこんな冷酷なことを告げる男がいるだろうか。  俺の心は知佳の涙を見て勝手に傷つくんだ。  俺なんかより知佳の方が何倍も何十倍も苦しいはずなのに。  知佳の頬に触れた手を知佳の手がギュッと掴んできた。  その小さな手は震えていて。 「……煌人は……2年後も、その先も……  私を好きで……いてくれるの……?」  知佳のその悲痛な叫びにフッと頭をよぎった悠子さんの柔らかな笑顔。  馬鹿な。 「…………。」  この知佳の質問に何と答えることが知佳にとっていいのだろうか。 「ああ……今は知佳以上に好きな人なんていない。  だからこそ……知佳には幸せになって欲しい。」  知佳の手に力が籠る。
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