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「……煌人……
少し……考えさせて……」
知佳の弱々しい声音。
知佳の手を離して頭に触れ、髪を優しく撫でる。
知佳に触れるのも……これで最後かもしれない。
そう思うと愛しさと切なさが込み上げてくるのに……
「……ごめん……
今日は帰るよ。」
そう告げて立ち上がった。
だけど、やっぱり。
知佳を抱きしめてそのまま朝まで眠る気にはならない。
どこか冷めた自分が居る。
知佳の部屋を後にして愛車のレクサスに乗り込んだ。
ドサッと荒く腰を沈めて「はあ~」深い溜息が零れ落ちた。
傍に居てくれなければ生きていけないくらい
深く深く
身を焦がすほど情熱的に
人を愛することが出来れば……
聖時のことや
星野のことなんて関係なく
もっと我儘に生きていけるんだろうか。
俺は誰かを幸せにする自信がない。
仕事に費やしている同等の情熱を、恋愛にも捧げるほど俺はもう子どもじゃない。
俺は星野の為に
星野とともに生きていく。
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