内に秘めた焦がれる恋心

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 *****  翌日。  悠子さんと約束していたこともあったし、久しぶりに聖時に電話をかける。  時間なんて関係なく、聖時は出ないときは出ない。  朝一電話をかけてみたが、やはり聖時は電話に出なかった。  『話がある。   時間が出来たら電話してくれ。』  とりあえず、メールを送る。  仕事が始まれば、聖時のことを思い出す暇もなく。  気がつけば夕方だった。  そう言えば、聖時から連絡がねえな。  フッと思い出して、プライベートの携帯をスーツのポケットから取り出した。  電話帳を押すつもりが違うアイコンに指が触れて、画面に現れたのその上品な微笑みにドキッと心臓が跳ねた。  昨日俺の携帯で調子に乗って何枚も撮った、悠子さんの写真。  思わず見惚れてしまって手が止まる。 「……煌人さん?  どうかしたんですか?」  工藤の言葉にハッと意識が戻ってくる。  慌ててその写真を画面から消した。 「あっ…ああ……聖時に用事があったことを思い出して。  ちょっと、電話させてくれ。」  事務室へ戻りながら、工藤に答えた。  そのまま事務長室へ入りながら、聖時にコールをする。  その無機質なコール音は途切れない。  電話を切って「やっぱり出ないか。」ひとりごちる。  ふぅと小さく息を吐き出した。  聖時と電話が繋がったのは、その夜。  自宅に戻って、ネクタイを緩めているとプライベート用の携帯の着信音が部屋に鳴り響いた。  テーブルに置いていた携帯を取り上げて通話をスライドさせて耳に押し当てた。 【もしもし】  聖時の低い声音が携帯越しに聞こえてきた。  
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