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知佳から連絡がきたのは聖時との電話から1週間が過ぎた頃だった。
『少しでいい、会える?』
胸ポケットで振動する携帯に気づいて、手を突っ込む。
携帯のメールを確認すると、そう書いてあった。
無責任にもドキッと心臓が跳ねた。
知佳が……
俺とのことに何かしらの答えを出したに違いない。
俺は、知佳のその言葉を素直に受け止めようと思っている。
知佳が俺との別れを選ぶなら、それはそれで仕方がない。
なんなら、知佳のためには本当はそうするべきだと今でも思ってる。
もし、知佳が2年後まで俺といることを望んだら……
その時まで知佳の願いを叶えようと思う。
俺だって、聖時の政略結婚の話がなけりゃ、別れたいとは思わなかっただろうし。
『今日は無理だ。
明日の夜ならなんとか都合をつける。
それでもいいか?』
『うん、わかった。
何か、ご飯食べに行こうよ。』
初めてのことだった。
俺が忙しいことを理解している知佳は、平日の夜にどこかへ出かけようとせがんだことはなかった。
……最後……なのかもしれない。
『わかった。
7時には仕事を終わらせる。
レストラン予約しとくよ。』
『楽しみにしてるね』
最後くらいデートらしいデートをして、知佳を喜ばせてやりたい。
知佳の笑った顔を思い浮かべて、俺の顔も綻んだ。
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