内に秘めた焦がれる恋心

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 なんとか7時に仕事を無理やり終わらせて、知佳が待つ改札へ急ぐ。  普通の恋人がするみたいに、駅で待ち合わせをして、そこから電車に乗って、歩いてレストランに向かう。  改札を潜ると「きらと~!!」弾んだ声音が俺を呼んだ。  その声に視線を向けると、満面の笑みの知佳が俺に向かって手を振っていた。 「悪い、待たせたな。」  俺の言葉に知佳はさらに瞳を輝かせた。 「ううん、私も今来たとこだから。」  知佳はそう答えて笑顔を零した。 「……どうした?」  いつもより断然テンションが高い。  知佳は俺の腕に手を滑り込ませて腕を絡めた。 「こんな風に煌人と待ち合わせなんて初めてだから嬉しくて。」  知佳のこんなに幸せそうな表情を見て……  こんなことで喜ぶ知佳。  俺の胸は勝手に苦しくなる。  俺は余程知佳に我慢をさせていたに違いない。 「今日は思いっきり甘えたらいい。」  知佳の耳元で囁いた。  知佳は勢いよく顔を上げて俺と視線を絡めた。  その表情は驚きで満ちていて。   「クククク……」  笑いが零れる。  徐々に知佳の瞳が潤んできて。  知佳は俺の腕にグッと抱き着いてきた。 「うん……そうする。」  知佳と腕を組んだまま電車を乗り継いで、目的地へ向かう。  その間知佳は本当に楽しそうで、色々なものを見ては俺を呼ぶ。 「ねえねえ、煌人あれ見て~。」 「あの服煌人に似合いそう。」 「煌人、大好き。」  そう言って俺の腕に何度も抱き着いてくる。  知佳は……猫みたいでかわいい。  あったかくて、柔らかくて……  スリスリスリスリ肌を寄せてくる。  
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