内に秘めた焦がれる恋心

14/29
前へ
/441ページ
次へ
 知佳とホテルのレストランでディナーを堪能する。  知佳は本当に美味しそうに食べていて、会話も弾む。  だけど。  これからのこと、結婚のこと。  知佳は何も言わなかった。  こんなに楽しそうな知佳に……  俺からその話を振るのもためらって、知佳から話してくるのを待つことにした。  そもそも、知佳から話があるって言ってきたわけだから、その話をせずままに今日を終えることはないだろうと思っていた。  俺も電車で来たから、ワインを飲んだ。  知佳とのデートも知佳との食事も今日で最後かもしれない。  ずっと、そう思いながら、知佳との時間を過ごした。  知佳と手を繋いだままホテルを出る。  太陽の明かりはなくなっても、まだまだ明るさを失わない街並み。  ウインドウには煌々と明かりが照らされていた。  その一角で知佳は足を止めた。  そのショウウインドウを見上げる知佳。  俺も知佳と一緒に視線を這わせた。  俺の心臓はドキッと強く拍動する。  そこには……  結婚を望む女性なら一瞬でその虜になるだろう。  純白のウエディングドレスが堂々と煌きを放っていた。  ウエディングドレスから知佳の横顔に視線を移した。  知佳のその横顔には憧れと切なさが入り乱れているように感じた。  知佳は俺と繋がっていない反対の手をウインドウのガラスにそっと当てた。 「……煌人……ごめん……」
/441ページ

最初のコメントを投稿しよう!

958人が本棚に入れています
本棚に追加