内に秘めた焦がれる恋心

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 知佳は……  前に進もうとしている。 「……そうか。」  俺にはそれを止める権利なんてもっていない。  別れるように仕向けたのは自分自身だ。  俺から離れていこうとする知佳に  寂しさと切なさと愛おしさが込み上げる。  みすみす知佳を手離すなんて俺は馬鹿なことをしているかもしれない。  この先後悔するのかもしれない。  それでも……  俺は知佳に最高の笑顔を向けた。 「幸せにしてもらえ。」  見も知らない知佳を幸せにしてくれようとしている男。  その男に少しの嫉妬を抱きながら……。  それでもホッと安堵している自分がいるのも事実。  知佳の表情はスッキリとして見えた。 「……うん。  煌人……今まで有難う。  バイバイ。」 「ああ……元気でな。」  笑顔で手を振る知佳に、俺も手を振り返した。  知佳と付き合ってきたこの1年半。  知佳にとって俺の存在は有意義だったのだろうか。  俺は天を仰ぐ。  冬の星空には無数の星がちりばめられていて……。 「……幸せになれ……」  暗闇に輝く星空に……  願いをかける。
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