内に秘めた焦がれる恋心

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 *****  それから俺は星野の総合病院建設への道を着々と進んでいく。  契約書面を交わすのに轟の屋敷にも行った。  総合病院建設への初期費用としてかなりの額を提示された。  まあ、銀行から借りなくても星野の貯蓄でどうにかなる額ではあったが。  だけど、この話が水に流れて、この多額の金額が返ってこないとなれば……  ドブに捨てた大金。  世間から波風立てられなければいいが、何かたたかれでもしたら、貯蓄に底つく星野病院に耐えられる力はもうない。  星野は間違いなく右肩下がりで一気に経営が破たんするだろう。  総合病院建設のための建築会社選びでは、5社が名乗りを上げた。  総合病院の間取図や見取り図。  予算と工事日程。  目ん玉飛び出そうなくらいの金額。  これ0が何個ついてんだ……。  って、ちょっと面食らう。  それでも……  完成見取り図はテンションがあがる。  そこには確かに星野外科の未来の姿が映し出されている。  聖に住む人たちだけでなく、この病院で治療をしたいと希望する患者もきっと来る。  工藤は今回のこのプロジェクトのために俺の秘書になってもらったようなものだ。  このプロジェクトには必ず工藤を同行させた。  5社のプレゼンを聞いて、俺が気に入ったのは山根建設。  だけど……  結局建築会社は違う会社で決まってしまった。  俺の意見なんて全く通らない。  このプレゼンになんの意味があったのか。  引っかかる点が何点かあったが、知事の勢いに押されて深く追求することも出来ず、他の建設会社にあっさり決まってしまった。  この総合病院は知事のネームバリューがつく。  だから、知事もいい加減な仕事をする建設会社を選ばないだろうと思ってしまった。
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