内に秘めた焦がれる恋心

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 それと一緒に……  悠子さんは時々わが家へやってくる。  初めは1か月に一度のペースだった。  そのうち、聖時と連絡が取れないと言って我が家に来ることも増えて……。  いつの間にか悠子さんは一週間に一度は我が家に足を運ぶようになっていた。  気が付けば……  知佳と別れて1年半が過ぎていた。  相変わらずいつ来ても綺麗なお嬢様は我が家にくるとエプロンをつけるようで、その姿が微笑ましく可愛らしい。  こんな姿を毎日見られるなら、結婚も悪くないのかもしれない。  ……なんて。  結婚不適合者の俺の思想を狂わせる。  季節は廻り……  また夏がやってくる。  熱く、熱く……  胸を焦がす夏が。   「煌人さん、お食事が終わられたら少しお話がありますの。」  悠子さんは少し切ない表情を見せた。  それを見て……  また聖時か。  俺の中に苛立ちが生まれる。  悠子さんに対してじゃなくて、純粋に聖時に。  相変わらず、聖時は悠子さんへの扱いが荒い。  というか、婚約者としての役割は何一つ果たしてはいない。と言った方がしっくりくる。  聖時の彼女が不慮の事故でなくなってもう1年半が経つっていうのに……。  それでも、聖時もこの結婚をはっきりと拒絶してこない。  星野のことを思っているからなのか  自分の中にくすぶっていた男としての野心が戻ってきたのか  その理由まではわからないけど。  俺は一旦箸を置いた。 「先に話を聞きましょう。」 「いえっ!  本当に後でよろしいですわ。  ゆっくりお食事していただいて大丈夫ですわ。」  悠子さんがあまりにも焦って喋るから「クククク」可愛らしくて笑いが零れる。 「……本当に……  煌人さんは笑い上戸ですわ。」
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