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「……あの……実は……」
悠子さんはせっかくあげた顔をまた下げて、俯いてしまった。
「こんなこと……いくらお義兄さまだからって……言うべきことではないとわかっているのですけど……」
なんとも歯切れが悪い。
そしてまた……口を閉ざした。
「気にせずに何でも言ってください。
聖時のことなら……俺にも責任がある。」
悠子さんは……ゆっくりと顔を上げた。
「……責任……?」
そこを気にするとは正直思ってもいなくて。
「……そう。
あなたの婚約者は……本当だったら俺だったはずだから。」
どうしてこの言葉を俺はもう一度言葉にしてしまったのか……。
悠子さんの瞳に切なさが宿る。
ドキッと心臓が跳ねる。
その瞳が……
俺を勘違いさせる。
……俺のことを……好きなんじゃないか。……なんて
ハッ!何を馬鹿なことを。
俺だって別に悠子さんを好きなわけじゃ……ない……
「聖時より俺の方がいい……なんてことは言いませんし、俺も結婚不適合者だと思っているので……。
だからって、聖時が悠子さんに対して雑に扱っていいわけがない。
悠子さんはもう大切な星野の家族の一人ですから。」
俺は自分の気持ちを誤魔化す様に満面の笑みを向けた。
俺の言葉に悠子さんは苦しそうに微笑んだ。
悠子さんの心を苦しめるようなことを聖時がしているのかもしれない。
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