内に秘めた焦がれる恋心

25/29
前へ
/441ページ
次へ
「……悠子さんが何かの責任を感じることはありませんよ。」  俺の言葉に悠子さんは視線を向けた。 「……悠子は……  聖時さんにとって……必要な人間ではありませんの……。」  その言葉にドクンと大きく心臓が跳ねた。  この言葉を……どんな気持ちで吐き出したか……。  悠子さんだって……  好きで聖時と結婚する道を選んだわけではないはずだ。 「……どうして……そう思うんですか?」 「……聖時さんは……時々悠子とお食事に行ってくださいますわ……。  でも……それだけ。  恋人のように手を繋いで歩いたことすらありませんわ。  マンションに伺っても……仕事を理由にすぐに帰るように言われて。  ……聖時さんはお優しい方です……。  だけど……悠子には……何を考えているのか全くわかりませんの……。」  悠子さんは大きく息を吐き出した。 「昨日……珍しく一回目の電話でお出になられて。  ですけど……声が……聞こえたんですわ……」 「……声?」 「……ええ……  女性の……声ですわ……。  『聖時くんの首筋いい匂いがするね』……って……」  ドクンと心臓が強く跳ねて、動悸がする。  ……何考えてるんだ、クソ聖時!! 「………………」  悠子さんに返すべき言葉すら浮かばなくて。 「……それは……そういう……こと……ですわよね……  電話はすぐに切られてしまいましたけど、これは聖時さんからの忠告なのかもしれませんわ……  悠子のことなんてどうでもいい、悠子のことなんて好きになるつもりもない。……きっと……そういうことなんですわ……」  悠子さんの声音は震えていて。  どうしようもなく聖時にイラついて。
/441ページ

最初のコメントを投稿しよう!

958人が本棚に入れています
本棚に追加