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「どうして、こんなに悠子に心を開いてくださらないのか……。
この結婚に……お互いの気持ちは不要……」
悠子さんの覚悟が……垣間見える。
「だから、聖時さんが悠子を好きになる必要も、悠子が聖時さんを好きになる必要もない。……何度もそう自分に言い聞かせてきましたの……。
だけど……」
悠子さんの瞳からまた涙が溢れてきて。
どうしようもなく。
力なく泣き崩れるこの人を……
抱きしめてやりたい。
「天罰が下ったんですわ……。
聖時さんの大切な方を殺してしまったのはきっと……このわたくしなのですから。」
「違う!」
俺は両手を握りしめた。
この人は……
絶対に俺のものにはならない。
してはいけない。
「聖時の恋人が亡くなったのは不慮の事故です。
車にはねられた。聖時はそう言っていた。
決してあなたの責任なんかじゃない!」
俺の強い声音に一瞬の沈黙が生まれて……
悠子さんは両手で顔を覆った。
「……うっ……うう……」
声を殺して泣く悠子さんに……
胸が締め付けられる。
俺だったら
こんなに泣かせるようなことはしない。
もっと笑顔にしてあげられるのに
今すぐに……
強く、強く……
抱きしめてあげられるのに。
悔しくて
苦しくて
胸が痛い
───そして、気付く。
ああ、そうか……
俺はこの人が……
好きなんだ。
……暗闇に流れる星が
もしも本当に願いを叶えてくれるなら……
今すぐ俺を医者にしてくれ。
悠子さんを幸せにしてあげられる医者に……
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