内に秘めた焦がれる恋心

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 親父はもしかすると、俺の気持ちに気が付いたのかもしれない。  俺の肩をポンポンと優しく叩いて、俺を諭す。 「悠子さんのために考えよう。  この件はわたしが引き受ける。  煌人も少し落ち着きなさい。」  親父が俺を受け入れたから……  それに安堵して、我に返る。  大きく息を吐き出して、リビングのソファに腰を下ろした。  自分の今までの行動に恥ずかしさが込み上げてきて両手で顔を覆う。  ……ヤバイな  きちんと気持ちをセーブしていかなきゃ。  悠子さんはこれからもここへ度々来るだろう。  いちいち聖時に腹を立てていたら、俺がもたない。  この恋のゴールは……  もう見えている。  始まった時から、スタートもゴールもなくて。  そもそもスタートしてはいけない恋だったのだから。  ……そして。  親父は俺に言った言葉の通りに聖時を今の病院から異動させた。  聖時は上の命令で飛ばされたと思っているだけだろうが。  実際に飛ばさせたのは親父。  親父とその病院の院長が大学時代の同期。だったらしい。  親父の歳にもなると各方面に教授クラスがいるもんだ。  この大学病院への異動が……  俺たち3人の関係を一気に変えていく。  もし……  俺の手で悠子さんを幸せに出来るのなら……  今から医者でも学者でもなってやる。  運命の歯車は……  ゆっくりと動き始めていた。  
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