許されぬ想い

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 聖時さんは月のように静かな方で……。  私の言うことを聞いているのか、いないのか  それすらもよくわからない。  ただ、はっきりとわかることは  わたくしに対して何の感情も持ち合わせてはいない。  それだけははっきりとわかるのですわ。  わたくしが送るメールに返事なんてほとんど返ってはこない。  それを寂しいと感じているわたくしは……  聖時さんを"好き"なんだと思う。  好きか嫌いかと問われれば……  嫌いでは……ありませんもの。  今日伺うことをメールで送って、聖時さんをマンションの前でひたすらに待ち続ける。  こうでもしないと聖時さんには会えませんもの。  平均2時間は待ちますわ。  待つ間の過ごし方も最近は心得てきましたの。  聖時さんのおかげで今までの読みかけの本も全部読みつくしましたし、冬場の間に編み物もマスターしてしまいましたわ。  ……自分でも思いますの、わたくしって前向き。  マンションのエントランスのソファに座って大きく溜息を吐き出した。  本当はこんな待ち方したいわけじゃありませんわ。  ですけど、普通のデートの仕方も知りませんし。  お忙しい聖時さんにそれをせがむのも我儘な気がして……。    玄関の自動扉が開く音がして視線を上げた。  視線が絡むとその方は足を止めた。 「聖時さん、おかえりなさい。」  ようやく会えた聖時さんに声が弾んだ。 「……悠子さん……」  
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