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それから2週間後の土曜日。
聖時さんからは相変わらず連絡なんてなくて。
聖時さんからのアクションを待っていたらわたくしあっという間におばあさまになってしまいますわ。
21時を回ったことを確認して聖時さんに電話をかける。
昼間より遅い時間の方が電話に出てくださる確率は高い。
この1年強で……
その程度のことしか聖時さんのことを知ることが出来ていませんの。
当直と宅直というものがあるみたいで、毎日自宅に帰られるわけでもないみたいですし。
だからと言って、いつなら自宅にいらっしゃるのか、聞いたからって教えてくださるわけでもなく。
胸を張って聖時さんのフィアンセだと言えるようなことは、何一つありはしませんの。
ですけど……
わたくしは、この"聖時さんのフィアンセ"から抜け出すわけにはいかないのですわ。
聖時さんのフィアンセであることを自分が一番忘れてはいけないと思っていて。
だから、何度も言葉にしてしまっている。
「悠子は聖時さんのフィアンセなんですから」
その事実に、わたくし自身気が付いていないほど……。
そして……。
珍しく。
いいえ、今までで初めてのことですわ。
聖時さんへかけた電話の発信音が一度目のコールで途切れたのは。
【……ガサササッ】
耳障りな音が先に響いた。
「……もしもし?」
【───るな!】
怒気を含んだ強い声音が耳の奥に響いて、ドキッと強く心臓が跳ねた。
「……聖時さん?」
何が起こっているのか状況がよく把握できなくて。
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