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翌日、わたくしは星野のご自宅へ出向いた。
週に1度になった星野家への訪問。
聖時さんが居ないのに星野のご自宅へ伺っても誰も不思議そうな顔をする方はいなくて。
唯一、妹の凛子さんは……わたくしのことをあまりよくは思っていない様子で。
きつい瞳でいつも睨みつけられる。
まだ、2、3回程度しかお会いしたことはありませんけど。
きっと、聖時さんがいらっしゃらないのに、星野のご自宅に出入りしていることに納得されていないのですわ。
……当たり前といえば、当たり前の反応ですわ。
昼過ぎに伺うと、いつものように節子さんがわたくしを出迎えてくれる。
節子さんの雰囲気がとても好きで、節子さんに友達のように接してしまっている。
それでも節子さんは全く嫌な顔をせず、いつも嬉しそうに微笑んでわたくしの話を聞いてくれるのですわ。
「お2階のお掃除してまいりますわ。」
少し節子さんとお喋りをして、その後に煌人さんの部屋のお掃除をするのが、わたくしの日課。
本当は聖時さんのお部屋の掃除をするべきなんですけど、使っていないから、埃を取るくらいしかすることもなくて。
コンコンと小さくノックをして、返事のない煌人さんの部屋の扉を開く。
開くとふわっと香ってくる煌人さんの香り。
苦いコーヒーの香りが煌人さんの香り。
コーヒーは好きではありませんけど……
この匂いは……
何故だか心が落ち着いて……
煌人さんを近くに感じることが出来る。
ゆっくりと扉を閉めて、掃除なんていりそうにもない綺麗な煌人さんの部屋の奥に一歩ずつ足をすすめる。
煌人さんの部屋の掃除をわたくしがしていることは煌人さん本人は知らない。
節子さんに口止めしているのですわ。
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