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このお部屋の掃除をするようになって、煌人さんの好きなものを知る。
経済学部を出ているから、経済にはやっぱり興味があるみたいで。
毎月届く経済雑誌や英文ニュース雑誌。
好きな音楽。
LEGENDっていうバンドグループ。
伊部に調べてもらって……最近はわたくしも家で聴いてますの。
あと……洋画。
DVDが沢山棚に並べられていて。
この洋画を誰と観るのか……。
見も知らない煌人さんの恋人に……勝手にジェラシーを抱いたり。
この部屋にいる時だけは……
煌人さんに恋するただの女の子でいられるのですわ。
煌人さんの眠っていた形跡が残るベッドの抜け殻に近づく。
ゆっくりと膝をついて、シーツを撫でる。
こんなこと……
してはいけない。
わかってはいるけれど……。
そっと、シーツの上に頬を乗せる。
煌人さんの香りが濃くなって……。
ドキンと心臓が高鳴る。
そして……瞳をゆっくりと閉じる。
「悠子さん」煌人さんがわたくしを優しく呼ぶ声を思い出して……。
わたくしに向けてくださる優しくて眩しいほどの笑顔を思い出して……。
「……煌人さん……」
掠れるほどの小さな声音で大好きな人の名前を呼んだ。
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