許されぬ想い

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 節子さんは冷蔵庫からトマトを3個取り出した。 「トマトだけは常備してますからね。」  星野家の冷蔵庫の野菜室の半分はトマトで埋め尽くされてると言ってもいいくらい。 「お手伝いしますわ。」  わたくしがバッグからエプロンを取り出すと、節子さんはキッチンの半分をわたくしに譲ってくれますの。  エプロンをつけながらキッチンへ入る。  台所で手を洗いながら自然に聞くのですわ。 「今日は煌人さん何時にお帰りになられますの?」 「給料後ですから、いつもよりは早いと思いますよ。  早く帰れると思う。って朝言われてましたから。」 「……煌人さん……。  毎日帰ってきてここでご飯を食べられますの?」  恋人の方とどこかでお食事とか……しないのかしら?  煌人さんのことを聞くときはいつもドキドキと心臓の音がうるさくなる。  初めのころは……  誤魔化す様に聖時さんの話をしながら煌人さんのことを聞いていたけれど。  正直、聖時さんのことを聞いても全然心がときめかない。  いつの間にか……  聖時さんのことを聞かなくなった。  それでも、節子さんは何も言わずに煌人さんのことを教えてくれる。  だから意外とわたくしのこの想いに気づいていないのかもしれない。  節子さんもまさか、わたくしがフィアンセの兄に恋心を抱いているなんて思いもしないのかもしれない。  ……そう、思っていたのですわ。 「ええ、仕事で帰れない時以外は毎日帰って来られて、夕食を摂られますよ。  悠子さんが来られるようになるまでは時々外食されているときもありましたけど……。  ここ最近はそうゆうこともなくなりましたね。  煌人さんは忙しい方だから……彼女に振られてしまったのかもしれませんね。」 「え!?」
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