許されぬ想い

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 煌人さんが一口目の大根を口に運ぶ。  それをダイニングのテーブルに座ってお紅茶をいただきながら感じ取る。  しばらくすると……。 「うん、美味しいな。」  煌人さんの優しい声音。  耳に心地よく響いてきて。  自然と顔が綻ぶ。  ゆっくりと視線を煌人さんに向けると零れ落ちるほどの眩しい笑顔がそこにはあって。  ドキンっと心臓が高鳴る。  わたくしの……  大好きな笑顔 「煌人さん、お食事が終わられたら少しお話がありますの。」  その笑顔を守るために……  わたくしに出来ること。  聖時さんと……結婚する。  わたくしの言葉に煌人さんは箸を置いた。 「先に話を聞きましょう。」 「いえっ!  本当に後でよろしいですわ。」  煌人さんがそんなことを言うなんて思ってもいなくて、焦って言葉を紡ぐ。 「ゆっくりお食事していただいて大丈夫ですわ。」 「クククク」  煌人さんは右手を口元に持っていくと笑いを零した。 「……本当に……  煌人さんは笑い上戸ですわ。」  煌人さんの笑い声も  笑った顔も  すべてが好き。  太陽のように眩しいその笑顔が……  わたくしを照らしているようで    一人じゃないと勘違いしてしまう。  聖時さんのフィアンセでいる限り……  この人はわたしくの見方でいてくれる。  煌人さんのゴツゴツした大きな手に触れてみたい。  触れられない。  ……触れるわけにはいかない。  抱きしめられたい。  そんなこと……  許されるわけがない。
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