許されぬ想い

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「悠子さんはもう随分と星野の家に慣れましたね。  節子さんとも仲良しだし。」  煌人さんは話題を変えた。 「ええ……。  皆さん、いつも笑顔で悠子のことを受け入れてくださるから……。  ここへ来ることは全然苦じゃありませんわ。」  煌人さんに会いたくて……  勝手に来ているのだから 「煌人さん、申し訳ありませんわ。  悠子がお食事中に言ってしまいましたから、気を遣わせてしまいましたわ。」 「いいえ。  美味しいからすぐに食べ終わってしまいます。」  煌人さんはサラッと言葉にする。  そして、置いていた箸を持ち直した。  煌人さんは……  その言葉でわたくしがどれほど気持ちを高揚させるかご存じないのですわ。  煌人さんから視線を逸らす。    顔が絶対に赤に染まっていると思う。  頬が…熱いから……。  それから煌人さんは何度か美味しいを繰り返し、あっという間に夕食を食べ終わった。  もしかすると、わたくしのせいで急いで食べられたのかもしれませんわ。  食べ終わったことを確認して、煌人さんの前に玉露をいれた湯呑を置いた。 「ああ、有難うございます。」  また優しく微笑んで、煌人さんは湯呑に手を伸ばした。  玉露を飲む時のホッと安堵した表情を見ると、わたくしまで心が落ち着く気がする。 「ご馳走様でした。」  煌人さんはきっちりと両手をあわせた。  わたしくしに視線を向けると「リビングでも大丈夫ですか?」そう訊ねてくれた。 「……え、ええ……。」  リビングにはお父様もいらっしゃるから……。  聞かれていい話しではないから、返事がぎこちなくなる。
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