許されぬ想い

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 どう答えようか困っていると 「応接間に行きましょうか。」  煌人さんはそんなわたくしの気持ちをすぐに察してくれる。  煌人さんはダイニングの椅子から立ち上がって、節子さんに視線を向ける。 「節子さん、応接間に紅茶とコーヒーをお願いするよ。」 「悠子が持っていきますわ。」 「それじゃあ、悠子さんにお願いしますね。」  わたくしの慌てた声音に、節子さんはいつもの笑顔をくれた。  煌人さんが先に応接室へ向かったことを確認して、キッチンへ向かう。  節子さんに教えてもらったエスプレッソマシーンを使ってコーヒーを淹れる。  その間にティファールでお湯を沸かして、自分の為のお紅茶を入れる。  節子さんはその間、煌人さんの食べ終わった食器を片付けていた。  キッチンから応接室まで結構距離があることを思い出して。  トレイに乗せて持って行く間に不安定な足取りで溢してしまう気がして。 「……節子さん、ワゴンとか……ありませんの?」  いつも伊部が押しているワゴンを思い出して節子さんに訊ねた。 「ワゴン……?」  節子さんが首をかしげた。 「ええ。  トレイで応接室まで持っていく自信がありませんの。」  少し恥ずかしくて頬を染める。 「ふふ。  そうですね。  ワゴンの方が安心しますね。」  節子さんは水道のレバーを下げて水を止めると、手を拭いて納屋へ向かう。  少し待つとゴロゴロと音を鳴らしながらワゴンを持ってきてくれた。 「どうぞ。」 「有難う。」  トレイの上にカップを乗せて、煌人さんのミルクも忘れずに。  それをワゴンに乗せた。  ワゴンを押しながらゆっくりと応接室へと向かう。  部屋の明かりが扉から漏れ出していて、そこに煌人さんがいることを示す。
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