許されぬ想い

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 コンコンとノックをして、扉を開けようとしたところで、先に扉が開いた。  煌人さんはわたくしの前にあるワゴンに視線を向けた。 「溢したらいけないと思ってワゴンに……」 「賢い選択ですね。」  煌人さんの笑顔を見て、ワゴンにしてよかったと安堵した。    ようやく二人でソファに腰を下ろした。  煌人さんは必ずコーヒーの香りを楽しむ。  その後に、ミルクを垂らすのですわ。  いつものその光景を見届けて、わたくしもお紅茶を口に含んだ。  心の奥からソワソワが溢れ出してきて。  わたくしから話があるなんて言っておきながら……  なんて話を切り出したらいいのか。  煌人さんの為にこの結婚を受け入れる。    聖時さんが……わたくしを好きにならないとしても……。  どうにか、それをわたくしにわからないようにしてもらえないものか。  ……せめて……。  だけど……  実際わたくしも同じようなものかもしれない。  聖時さんのフィアンセでありながら……  聖時さんのいないご実家に、煌人さんに会いにきているのですから。 「……ここなら話せますか?」  煌人さんの言葉にドキッと心臓が跳ねた。  ティーカップに向けていた視線をゆっくりと上げた。 「……あの……実は……」  意を決して視線を上げてはみたものの……  煌人さんの瞳を見つめると決心が揺らぐ。  こんなことを話してしまったら、聖時さんはどうなるのでしょうか。 「こんなこと……いくらお義兄さまだからって……言うべきことではないとわかっているのですけど……」  わたくしがただ、我慢し続ければいいだけのこと。
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