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「聖時に恋人がいたことを知っていたんですか?」
煌人さんの驚いた声音に視線を逸らして「ええ」と、答えた。
「ですけど……。
悠子とのことがありましたらか、お別れになられたのかもしれませんわ。
悠子が聖時さんのマンションへ行くことを断られたことはありませんし、恋人らしい方のお姿も拝見しませんから……。」
「亡くなった……らしいです。」
ドクンッと心臓の鼓動が強く跳ねる。
「え……!?」
逸らしていた視線を勢いよく戻した。
「恋人の方がですの!?
い、いつ……!?」
もしかして……
わたくしがあの時にあんなことを言ってしまったから
聖時さんの恋人の方に何を言ったのか。
はっきりとしたことまでは覚えてはいない。
それでも……。
あの幸の薄そうな気弱そうな彼女の顔を思い出して。
わたくしの言葉で追い詰めてしまったのかもしれない。
……自殺……したんじゃないか。
煌人さんにそう言われたわけでもないのに、わたくしの頭の中はパニックで勝手にそう決めつけてしまった。
「……もうかなり前です。
悠子さんとの結婚の話が出てきて結構すぐのことだったと思います。
1年半は前ですけど……。」
「1年半……。
それって……悠子がこのご自宅へ初めて来た頃ではありませんの?」
わたくしのせいではないことを祈りたい。
あの方が居る限り、わたくしは聖時さんの一番にはならない。
あの方から聖時さんを奪い取って結婚したとしても、聖時さんと何一つ気持ちが繋がっていないわたくしでは……ただの紙の上での繋がり。
その事実があの時のわたくしを不安で覆いつくしていた。
「申し訳ない。
そのころの記憶はもう曖昧で。
しかも、タイムリーで聞いたわけではなかったので。
俺も後になって聖時から聞いたんです。
だけど、多分、悠子さんがここへ来られた後だったと思いますけど。」
後になって聞かれたのなら……。
可能性はかなり高い。
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