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"「何があっても聖時さんと結婚します。
聖時さんはわたくしと結婚して総合病院の院長になられるのですわ。
結婚はまだ先ですわ。
それまでの間に聖時さんの為にあなたはどうなさるべきか考えていただけますこと。」"
薄っすらと蘇るわたくしがあの方へ言い放った言葉。
スーッと血の気が引いていく感じがして、気分が急激に悪くなる。
「悠子さん?
どうしたんですか?
大丈夫ですか?」
遠くで煌人さんの慌てた声音が聞こえた気がした。
一瞬意識が遠のいて。
ゆっくりと意識を取り戻した時には……
わたくしの身体は宙に浮いていて、視線の先に煌人さんの綺麗な輪郭が見えた。
何がどうなったのか頭が働かなくて、わたくしはぼーっと煌人さんの綺麗なフェイスラインを眺めていた。
「どうした!?」
お父様の驚いた声音を聞いて我に返る。
意識が一瞬なくなったことを理解して、驚いた煌人さんがきっと抱きかかえてくださったんですわ。
煌人さんの香りがいつもより濃い。
それだけ……近くにいる。
わたくしを軽々抱き上げている煌人さんの力強い腕に非常識にも胸がときめいているわたくしは、きっと罰を受ける。
……いいえ。
もう、受けているのですわ。
「……あ…あの……だいじょうぶ……ですわ……」
わたくしの掠れた声音は煌人さんには届かなかったのかもしれない。
「急に倒れて。
とりあえず、客室へ連れて行く。」
「ああ、そうだな。
母さんに診察してもらおう。」
急に倒れたりしたから、皆さんに迷惑をかけてしまっている。
煌人さんに抱きかかえられたまま2階の客室へ入り、そこのベッドへ身体を下ろされた。
「……申し訳ありませんわ……」
「そんなこと気にしなくていい。」
煌人さんはわたくしにシーツをかけながら答えた。
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