許されぬ想い

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 お母様に診察していただいて。  とりあえず落ち着くまで横になっているようにと言われましたの。  その後はお母様も節子さんも客室から出て行かれて……。  煌人さんと二人きり。 「暫く休むといいです。  目が覚めたら、俺が屋敷まで送りますから。  今は何も気にせずに眠ってください。  伊部さんにも俺から連絡しておきます。」  煌人さんの優しさが苦しい。  そんなに優しくしてもらえる人間ではないのに。  聖時さんのわたくしに対する態度が冷たいのは……自業自得だった。  わたくし自身が巻いた種。 「……何か……あったんですね……。」  煌人さんに"仕方ない"そう言いかけて……  言葉が止まる。  聖時さんがわたくしに対していつまでも冷たい態度を取られることも。  フィアンセが煌人さんではなかったことも。  それなのに煌人さんにかなわぬ恋をしてしまったことも。  全部、わたくし自身が巻いた種。 「その苦しみを……俺にも分けてください。  力になるって言ったでしょう。」  どこまでも優しい煌人さんの声音と笑顔。    その優しさに涙が零れた。 「……仕方……ないのですわ……。  悠子は……突然現れた婚約者ですもの……。  聖時さんの恋人の方にも……偶然会ってしまいしたの……。  その時に……悠子は……あの方を追い詰めるようなことを言ってしまったのかもしれませんわ。」  いいえ、きっとあの方を追い詰めた。 「聖時の恋人に……会ったことがあるんですか?」 「……ええ。  一度だけ。  ……ですけど、そのことを聖時さんはご存じないかもしれませんわ。  聖時さんに会いにマンションに伺いましたの。  そしたら……その部屋にいらしたのはその恋人の方のみで……。」  零れ落ちる涙を拭う。
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