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「それから、その方にお会いしたことはありませんの。
だからてっきり……。」
聖時さんのこれからのことを思って身を引いたのだと。
ふたりは別れを決意したものだとばかり……
「……悠子さんが何かの責任を感じることはありませんよ。」
考えふけるわたくしに煌人さんの優しい声音が届く。
煌人さんの優しい声音が
優しい言葉が……
───煌人さんがわたくしのフィアンセだったら
わたくしはこんなに苦しまなくてすんだのではないか。
そう思えて。
煌人さんに……
こんなこと言ってはいけない。
そう思っているのに……心の奥底では煌人さんに救いを求めていて。
「……悠子は……
聖時さんにとって……必要な人間ではありませんの……。」
もしも……
わたくしのフィアンセが煌人さんだったら。
わたくしを愛してくださいましたか?
フッと節子さんの言葉が頭をよぎる。
"「煌人さんは真っすぐな人だから、誰かを心底愛することが出来れば、星野病院同様に……いえ、きっとそれ以上に深い愛を注いでくれそうですけどね。」"
煌人さんが大切にしている星野外科病院以上に、深い愛情を注ぐことが出来る女性。
……それは……永遠に……わたくしではないのですわ……。
「……どうして……そう思うんですか?」
聖時さんにではなく、煌人さんに必要とされたい。なんて、言えるわけもなく。
当初から煌人さんに相談しようと思っていた聖時さんの女性関係についてのことに話をシフトチェンジした。
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