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「聖時さんの大切な方を殺してしまったのはきっと……このわたくしなのですから。」
「違う!」
煌人さんの力強い声音がわたくしの言葉を否定した。
「聖時の恋人が亡くなったのは不慮の事故です。
車にはねられた。聖時はそう言っていた。
決してあなたの責任なんかじゃない!」
……煌人さん……
煌人さん……。
わたくしを庇う力強いその声音が……
余計に苦しさを増して……
「……うっ……うう……」
溢れ出してくる涙を抑えられなくて、両手で顔を覆った。
わたくしを庇ってくださるのは……
お義兄様だから。
総合病院の院長になられる聖時さんのフィアンセだから。
わたくしの存在は煌人さんにとってそれ以上でもそれ以下でもない。
煌人さんの優しさは兄としてのもの。
それを苦しいと思ってしまうわたくしは……
救いようのない馬鹿な人間ですわ。
暗闇に流れる星よ……
もしも……
煌人さんがわたくしを愛してくださるなら
すべてを捨てて
今すぐその胸に飛び込んでいくのに……
煌人さんが傍にいてくださるなら
他には何もいらない。
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