958人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
いつの間にかに眠ってしまっていたみたいで、目を覚ますと部屋は真っ暗だった。
一瞬どこにいるのかわからなくて、混乱してしまったけれど。
星野家の客室であることを思い出して……大きな溜息が零れた。
あんなに取り乱して泣いたりしてしまって……
煌人さんはどう思っただろうか。
ゆっくりと身体を起こして、この暗闇に慣れた瞳を凝らして部屋を後にした。
何時なのかもわからなくて、リビングへ降りる。
わたくしの荷物もきっとリビングに置いてあるままなはずだから。
伊部に連絡して迎えに来てもらわなくては。
一階へ降りるとリビングの扉から明かりが漏れていて。
まだ誰かが起きている気配がそこに伺えた。
扉を開けて中を覗くと、足と腕を組んで瞳を閉じている煌人さんの姿が見えた。
その姿にドキッと心臓が跳ねた。
……わたくしが起きてくるのを待っていたのかもしれない。
扉が開く音に反応して煌人さんは顔を上げた。
その表情にドクンと強く心臓が脈打った。
煌人さんがとても疲れた顔をしていて。
そんな表情にさせたのは……このわたくし。
煌人さんに出会ってから今まで、こんなに疲れて苦しそうな表情をした煌人さんを初めて見た。
好きな人から……笑顔すら奪ってしまったのかもしれない。
……聖時さんの話なんて……しなければよかった……。
煌人さんのその表情が……
わたくしの胸をギュッと掴んで握りつぶすかのように苦しくて……。
煌人さんにかける言葉すら出てこない。
「……悠子さん、目が覚めましたか。」
煌人さんはわたくしにそう言葉をかけて
微笑んでくれた。
もう、それだけで……
わたくしに笑いかけてくれるだけで……
充分ですわ。
最初のコメントを投稿しよう!