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その言葉に深い意味なんてないはずなのに……。
その意味を知りたい。
……煌人さんにとって……わたくしは……
「さあ、屋敷にお送りしましょう。」
……馬鹿なことを。
何を……期待しているの。
「……それではお言葉に甘えて……。」
煌人さんに促されて、煌人さんの車に乗り込む。
今日もやっぱり後部座席。
煌人さんの運転は優しくて心地がいい。
……煌人さんの横顔を見つめることが出来る助手席。
そこに座ることが出来る方が羨ましくて。
座られている方を見たことはありませんけど……。
これからいつかは見なければいけない時がくる。
その方を……義理の姉として、わたくしは受け入れることが出来るのだろうか。
後部座席から時々見える煌人さんのゴツゴツとした大きな手を視界に入れるたびに、胸の奥がギュッと苦しくなって切なさが増していく。
「……煌人さん……。」
わたくしが名前を呼ぶとバックミラー越しに視線が重なる。
「どうしましたか?」
「……あの……。
明日のお仕事……大丈夫ですの?」
わたくしの遠慮した声音が静かな車内に響いた。
「あはは。
そんなこと気にしなくて大丈夫ですよ。
こんな時間に帰宅することもしょっちゅうのことです。
徹夜で帰れないこともありますし。」
「……え!?」
「自分の病院ですからね。
この病院を守るためなら、自分の時間なんて惜しくない。」
煌人さんの言葉が……
わたくしの心にズシンと重しをのせる。
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