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「……そんなに……大切ですの……?」
煌人さんともう一度ルームミラー越しに視線が重なる。
煌人さんの真剣な瞳がミラー越しにもわかる。
「ええ。
じいさんが建てた病院を、俺たちの代で潰すわけにはいかない。
星野病院は何があっても潰させない。
俺は……星野病院とともに生きていく。
それ以外に大切なものなんて……
今の俺にはありませんから。」
煌人さんの決意の籠った言葉。
胸の奥がドンドン苦しくなる。
煌人さんの大切な……"モノ"
人でも仕事でもなくて……
病院そのもの。
その為に仕事でどれだけ帰宅の時間が遅くなっても
それで恋人に振られても
聖時さんとそのフィアンセであるわたくしとの仲を悪化させないために仲裁に入ることも
煌人さんにとっては"星野外科病院"を存続させるためには仕方がないこと。
……義務。
「……心配……いりませんわ……。」
ドクドクと強く脈打つ心臓。
わたくしが煌人さんに出来ることは……。
「何があっても聖時さんと結婚いたします。」
煌人さんと視線を合わせて言うことが出来なくて。
その言葉を車窓に視線を向けて吐き出した。
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