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本格的な夏がやってくる頃、聖時さんは新しい職場へ赴任した。
私立の大学病院。
その大学から20分程度離れたマンションに聖時さんは引っ越した。
実は……。
あのマンションから引っ越しをされたことはわたくし的にホッと安堵したことは事実。
聖時さんと、その恋人の方が一緒に住まわれていたマンション。
わたくしはそのマンションに2年の間、2回だけ足を踏み入れたことがありますの。
たったの……2回。
ですけど……聖時さんとその恋人の方が愛し合っていた部屋だと思うと、それだけでソワソワとして落ち着かない。
だからって、朝までその部屋で過ごしたことなんて一度もない。
長くて30分程度。
わたくしはその部屋からすぐに外に出されてしまう。
新しい職場
新しいマンション
わたくしも心機一転、聖時さんのフィアンセとして、フィアンセらしくお世話をやこうと思いましたの。
煌人さんの為ではなく……
フィアンセである聖時さんの為に。
ですけど……。
わたくしの想いなんて、聖時さんが素直に受け止めてくださるわけもなくて。
すぐに跳ね返される。
伊部から「秘書の工藤さんから聖時さんからの伝言だそうです。新しいマンションの引っ越しの手伝いは不要です。あと半年したら、星野へ戻りますので必要なものだけ自分で用意しますので。とのことです。いかがなされますか。」相変わらずの無表情と抑揚のない声音で告げられる。
「そんなことを気にしていたらいつまで経っても聖時さんのお心は掴めませんもの。
もちろん、伺いますわ。」
聖時さんからの伝言なんて無視していつのもように強引に出向いたのですわ。
心にある決意を固めて。
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