許されぬ想い

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 返事がなくて……。  ですけど、今日は聖時さんに追い返されるわけにはいかないのですわ。 「いいでしょう?  今日を逃してしまったら次はいつ聖時さんと一緒にいられるかわかりませんもの。  悠子……寂しいんですのよ。」  聖時さんを見上げて、勢いで手を握る。  ……伊部に……言われましたの。  「手を握ってみるのは効果的かもしれません。」って。  あの抑揚のない冷めた声音。  それが本当なのかどうなのかわかりませんけど……。  今のわたくしはなりふりかまっていられない。 「……それじゃあ、俺のベッドで休んでください。」  聖時さんは初めてわたくしを受け入れてくれましたの。  その言葉に顔が綻んだ。  伊部のアドバイスも馬鹿に出来ませんわ  そう思ったのも束の間で…… 「俺はリビングのソファで寝ますから。」  そして……  そっとわたくしの手を離した。 「……聖時さん……  添い寝……してくださいませんの?」  心臓の鼓動がドクンドクンと相変わらず強く脈打って。    めげずに言葉にしてみたけれど……。 「悠子さん、結婚前なのにそんなことできませんよ。  お義父さんに殴られます。」  聖時さんは頬を緩めた。  わたくしを受け入れてくださったわけではないのですわ。  やんわりと否定されたのです。  わたくしは……  抱くに値しない。  それを、遊びではなくフィアンセだから、結婚するまでわたくしのことを大切にしたいと思っている。と、そう思うことが出来たなら。 「……そうですわね……」  これは。  罰なのですわ。  聖時さんの恋人を奪った罰……。  胸の奥が苦しくて、だけどそれに気づかないふりをしなければ……涙が零れそうで。
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