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その話題から話を変える。
……とりあえずはここへ泊ることを許されたのだから、一歩前進ですわ。
気持ちを切り替える。
「聖時さん、お食事はどうされましたの?
まだでしたらレストラン予約しましたのよ。
連れて行ってくださらない?」
「……今からですか?」
聖時さんの怪訝な声音に負けじと喋る。
「そうですわ。
8時に予約しましたから、もう行かなくては間に合いませんもの。」
聖時さんはふ~と小さく息を吐き出して頬を緩めた。
「それじゃあ、行きましょうか。」
「ええ。」
今日はやけに素直にわたくしを受け入れてくれる聖時さんに、わたくしの顔も緩む。
「……聖時さん、怒ってません?
本当なら悠子がお食事を作ればよいのに。
……聖時さんが帰ってくるかわかりませんでしたから……
もうお料理教室にも1年通ってますから料理の腕も上達したんですのよ。」
「へ~そうですか。」
聖時さんが優しいから、わたくしも調子に乗ってみるのですわ。
「明日は夕食を作って待ってますわ。
よろしいでしょう?」
「そうです……」
聖時さんは途中で言葉を止めた。
一呼吸置いて「悠子さん。」わたくしの名前を呼んだのですわ。
「明日はオペ日なのでいつ帰ってこれるかわかりません。
この部屋で一人で待たせてしまいますから、明日はお帰りください。」
ああ……。
やっぱりドライですわ。
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