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シャワーを終えて、ドライヤーで髪を乾かして、ドキドキを強くする心臓の鼓動を頭の奥に聞きながらゆっくりと部屋へ戻る。
聖時さんの姿はどこにもなくて……。
まさか、わたくしを置いてどこかへ行かれてしまったのかもしれない。
そう思いかけた時にベランダのカーテンが揺らめいているのに気が付いた。
ゆっくりとカーテンに近づくと、ベランダで空を見上げている聖時さんの後ろ姿が見えた。
……空?
意外とロマンチストなのかもしれない。
だって、ただの空ではなくて……暗闇に浮かぶ星を眺めているのだから。
その聖時さんの行為の意味なんて知りもしないわたくしは、また勝手に勘違いをしてしまって、わたくしを大胆にさせる。
部屋の中から星空なんて見えはしませんけど、わざわざ聖時さんが外へ出てまで眺めているのなら、暗闇に浮かんでいる星たちはさぞ綺麗に輝いているのだろうと。
その星空の下で……
初めてのキスなら、わたくしも嬉しい。
わたくしの存在にまだ気づいてはいない聖時さんの後ろ姿に思い切って抱き着いた。
心臓の鼓動がスピードを増して、壊れて口から飛び出てくるのではないかと思うほどで。
緊張と……
こんなにポジティブに考えてはいるけれど、この手を振りほどかれたらどうしたらいいのか……
不安で手が震えた。
「……聖時さん……
悠子……もう覚悟はできてますの。
……抱いてください……」
勇気を出して言葉にした。
これだけストレートに思いをぶつければ、わたくしに気持ちがない聖時さんだって
きっと……。
ですけど。
聖時さんはわたくしの覚悟が籠った手を身体から剥がしたのですわ。
「……悠子さん……
馬鹿なこと言わないでください。」
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